教育施設

白山市立蕪城小学校

竣工 2003年 1月
分類 教育施設
規模 鉄筋コンクリート造 地上2階
受賞 第33回石川県デザイン展 石川県建設業協会会長賞
備考 月刊スクールアメニティ 2007年3月号掲載

今日の学校建築は、教育を受ける「ハコ」としてではなく、子供たちが自由に活動や表現を行なえる、 ゆとりのある環境が求められている。
この白山市立蕪城小学校は、「空間のゆとり」「環境のゆとり」によって「心のゆとりを産み出す学校」として計画されている。
主体的に子供たちが行動するには、それを受け入れる大きな器が必要となる。 また、そこには主体的な活動を誘発する「装置」としての空間も必要である。
この学校では、友達同士や小さなグループで集まる空間と、学年単位や全校生徒が集まる大きな空間を設けている。 個々の空間やスペースには、子供たちと先生が一緒に考えながら使うカウンターやベンチ、 小さな囲われた空間(デン)などが設けらている。そうした空間に視覚的連続性をもたせ、 活動が広っがていくことにより、子供たちの自発性を誘発する環境としている。
子供たちが「毎日学校へ行きたい」「今日も友達と○○でおしゃべりしよう」と思える学校を造ることが、 この学校の大きな目標である。

□竣工後の反応

まず最初に子供たちが見つけたのは、体育館につながる大階段である。先生の「登ってもいいよ!」という一言に、 瞬時に歓喜しながら階段へ向かう姿は、圧倒されるものがあった。
この学校では、クラスルームを房状に配置する「クラスター形式」を採用している。 このプランの特徴は、南北の安定した採光を各室に取り入れ、中央に挟まれたオープンスペースを共有空間として 強く位置づける利点がある。オープンスクールとして計画されたため、 開校前には他の教室が気になり授業に集中できないのではと懸念されたが、 実際にはスムーズに空間と馴染んで学校生活を送っている。
学校へ行くたびに、先生からは「子供たちに走るなと言っても走るんだよ」と愚痴をこぼされる。 しかしその言葉の後には「でも、子供たちは走ることも仕事だから、 程々に注意するくらいなんです」という教育的な言葉がついてくる。 つくづく、理解のある先生で良かったと思った。
見た目にも他には無い豪華な学校ではあるが、そこには子供たちにとってここでしか体験できない空間が溢れている。 またその経験が、子供たちを見守る大人たちに大きな未来への可能性を見せる要素となっているのではないだろうか。