居住施設

油車の家 U邸

竣工 2005年 1月
分類 居住施設
規模 木骨造 地上2階建

中心市街地である油車に建つ住宅です。油車は、古くから残る町名で、 町沿いにながれる鞍月用水に水車をかけ油を挽いたことに由来します。 周辺には、里見町や水溜り町といった金沢の伝統的な町並みがあり、 また少し足を伸ばすと21世紀美術館をはじめとする金沢の新しい文化拠点が存しています。
敷地は用水に接しており、隣家は古くからの武家・商家なども多く、設計にあたっては

①この用水を活かした計画とすること

②周囲の町並みに配慮し、伝統的な色や素材を使いながらも現代的な感性を取り入れた新しい金沢の街中住宅モデルを標榜すること

③敷地が狭いことから、できるかぎり既成品を使いプランもシンプルなものとし、コンパクトでローコストな住宅を目指すこと

の3点をテーマとしました。

■外観のデザイン■

周囲の伝統的な建築をモチーフに、矩形の単純な構成の中に格子による繊細かつシンプルな マテリアルを入れ込むことにより、日本的な「間」のデザインと、 無骨な武家文化と京の繊細な公家文化を融合した「金沢文化」を現代的な手法で表現したいと考えました。

■建物の構成■

全体構成としては、主となる生活空間は2階に、玄関・和室・水周りなど利用頻度の少ない空間を1階に配しました。
2階は高い塀で囲まれたテラスをとり、その周囲にリビングや寝室といった生活空間を配することで、 街中においてもプライバシーが確保された良好な住環境を実現しました。 また、リビングや寝室の内部は開放感のある勾配天井として構成することで、 外観においても二つの大きなボリュームとなって表出させ、バランスのとれたファサードデザインを目指しました。
1階においては、ピロティ形式の駐車場をとり、勝手口はもちろんのこと主玄関までも雨がかりのない動線計画としました。 また、来客空間である和室は、窓から前面に植えられた竹越に用水を含めた周囲の風情が感じられる空間としています。

■用水の活用■

用水に架かる橋は、計画当初すでにあったものを改修したものです。設計においては、この橋を利用し、 主玄関を用水側に配して橋を通じて用水を割って入るような計画としました。 橋のデザインにおいては、 亜鉛ドブヅケでフレームを組み、それに杉板を貼って構成しモダンな和風デザインを意識しました。 また、用水周囲は気圧差が生じる関係で、自然と風が通ります。  高窓・テラス窓など風の抜け道を作ったことで、夏でも涼風が通る快適な住宅となりました。